経営者保証ガイドラインについて~後編~

前編では経営者保証ガイドラインの概要について解説しましたが、後編では具体的な利用方法について詳しく説明します。

ガイドラインの相談窓口

  • これから新規融資を借りるor既存融資の保証を見直したい場合⇒取引先金融機関
  • 事業承継時に保証が障害となっている方⇒事業承継引継ぎ支援センター
  • 保証債務の整理を経営者保証ガイドラインに基づいて行いたい方⇒中小企業活性化協議会や支援専門家(弁護士、税理士等)等

上記が相談先にはなりますが、経営者保証なしの融資を申し込む場合は前編で述べた適用条件を満たすために、ガイドラインに沿った経営・財務状況に整えることが重要です。既存融資の見直しも同様です。そして金融機関はガイドラインに沿った審査を行います。

既存融資はどうなるの?

既存融資の場合も、新規融資と審査基準は変わりません。適用条件を満たしていれば保証を外す事ができます。その場合は連帯保証人解除となり、保証書が返却されます。

事業承継時の適用とは?

前経営者に係る既存の保証契約を事業承継時に解除できる場合があります。その際は前経営者や後継者は下記のような対応を行う必要があります。

  • 前経営者は、実質的な経営権・支配権を有していないことを対象債権者に示すために、中小企業の代表者から退くとともに、支配株主等に留まることなく、実質的にも経営から退くこと(併せて、当該法人から報酬等を受け取らないこと)
  • 前経営者が、主たる債務者から社会通念上適切な範囲を超える借入等を行っていることが認められた場合は、これを返済すること。
  • 対象債権者にとって、法人の資産・収益力では既存債権の回収に懸念が残り、前経営者との保証契約以外の手段では既存債権の保全が乏しい場合には、前経営者の資産のうち、具体的に保全価値があるものとして対象債権者が認識していた資産と同等程度の保全が、後継者等から提供されること。

保証債務時の適用とは?

会社の経営が厳しく、法人が破産しても、「経営者保証に関するガイドライン」を活用し、保証債務を整理することで、個人破産を回避し、再出発できる可能性があります。
経営者保証に関するガイドラインに基づき保証債務整理を行った場合、保証人の手元に残すことのできる資産(残存資産)は、個人破産の際に残すことができる自由財産に加え、経済合理性の範囲内で、一定期間の生計費、華美でない自宅等のインセンティブ資産を残せる可能性があります。
ただし以下の要件を満たす必要があります。

  • 法人(主債務者)が法的整理(破産、民事再生等)や私的整理及びこれに準じる手続(準則型私的整理手続)を開始申立済みであること
  • 対象債権者に経済合理性が期待できること
  • 法人(主債務者)及び保証人が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、財産状況等について適時適切に開示していること

ガイドラインに沿った経営とは?

前編で述べたガイドラインの適用条件を満たした場合に、経営者保証なしでも融資が通る訳ですが、具体的な取り組みとしては下記のような事があげられます。利用の際の参考にしてください。

  • 貸借対照表、損益計算書の提出のみでなく、これら決算書上の各勘定明細(資産・負債明細、売上原価・販管費明細等)の提出
  • 期中の財務状況を確認するため、年に1回の本決算の報告のみでなく、試算表・資金繰り表等の定期的な報告
  • 外部専門家に下記事項を重点的に検証してもらう
    (1)業務、経理、資産所有等に関し、法人と経営者の関係が明確に区分・分離されているか
    (2)法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・配当、オーナーへの貸付等)を社会通念上適切な範囲を超えないものとしているか
  • 資産の分離については、経営者が法人の事業活動に必要な本社・工場・営業車等の資産を所有している場合、経営者の個人所有とはせず、法人所有とすることが望ましい
  • 経理・家計の分離については、事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付は行わない、個人として消費した費用(飲食代等)について法人の経費処理としない

利用の際の注意点

経営者保証なしで融資が受けられるのであれば、誰もが利用したいところですよね。ただし、注意点もあります。それは「金利の一定の上乗せ」です。
経営者保証を求めないことによる信用リスク等の増大は、法人の社内管理体制の整備等経営改善の状況や、法人の規模、事業内容、収益力等によって異なってくるため、そのリスクに見合った適切な金利が個別に設定されることとなります。

まとめ

経営者保証なしの融資であれば、個人のリスクを追わずに様々なチャレンジをすることができるでしょう。しかし経営者保証を付けない代わりに、適用条件を満たして債権者にも納得してもらう努力が必要です。
弊所では融資サポートとして事業計画書の作成を承っておりますが、書類作成だけでなく融資利用についての様々なアドバイスも行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

投稿者プロフィール

鈴木 愛美
鈴木 愛美
さいたま市の気軽に頼れる秘書系行政書士です。
過去のメガバンク法人融資担当とベンチャー企業勤務での経験を活かし、行政書士として中小企業支援を目指しております。会社設立や各種許認可、契約書、補助金申請等をサポートいたします。融資相談も承っており、事業計画書も作成可能です!