【インタビュー前編】「人の人生に、深く長く寄り添いたい」行政書士・鈴木愛美のキャリアと原点

行政書士・鈴木愛美さんは、元銀行員、専業主婦、商社、不動産会社など、多彩なキャリアを経て現在に至ります。一見するとバラバラに見えるその歩みには、「人の人生に、深く長く寄り添いたい」というブレない一本の軸がありました。

2026年9月、再び自身の事務所を立ち上げ、新たなスタートを切った鈴木さん。インタビュー【前編】では、これまでのキャリアと、独立を決断した背景にある想いに迫ります。

PROFILE

行政書士
鈴木 愛美(すずき めぐみ)

群馬県出身。短期大学を卒業後、「株式会社みずほ銀行」に入社。法人融資業務に従事し、企業財務の現場で実績を重ねる。出産を機に銀行を退職。育児に専念したのち、在宅経理から社会復帰を果たす。その後は、商社や不動産会社での実務を経て、行政書士資格を取得し、独立開業。

Table of Contents

「みんなのお姉ちゃん」的存在。働き方への思いの原点となる学生時代の歩み

──幼少期はどんなお子さんでしたか?

私は2つ下の弟がいて、幼なじみも年下の男の子ばかりだったので、みんなのお姉ちゃん的な存在でした。人の面倒を見るのが好きな子供だったみたいです。

あと、よく両親から負けず嫌いだと言われていました。小学校のマラソン大会で下位だったときにとても悔しい思いをして、マスクにガムテープを貼って家の周りを走ったりしていましたね(笑)。それから徐々に順位を上げていって、中学ではずっと学年1位でした。

負けず嫌いは勉強も同じです。中学生時代、先生から「もっとできるだろ」と言われたことをきっかけに勉学にも励むようになり、成績はよい方でした。

ただ、私は人に負けたくないという気持ちはあまりないです。今でもそうですが、負けて悔しいのは相手に勝てなかったからではなく、自分の実力が出し切れなかったからなんですよね。

──高校時代はどのように過ごしましたか?また、進路を大学から短大へと進路を変えたきっかけを教えてください。

私は「0か100」でしか動けないタイプなんです。中学は勉強と部活動ばかりでまったく遊んでいなかったので、高校は青春を満喫しました(笑)。それもあって、短大以降は勉強に集中できたのだと思います。

高校3年生の夏休み中、新聞や本で、2年後に団塊世代が退職して就職が有利になるという記事を読みました。「2年後ってことは、短大に入ればちょうど卒業のタイミングと重なるな」と思い、すぐにAO入試を受けて、夏休み中に産能短期大学に合格しました。

もともと「大手企業に就職したい」という目標がありましたが、すぐに行動に移したのは、せっかちな私らしい衝動的な決断だったと思います。

ただ、勝手にAO入試を受けたので、高校の先生には事後報告だったんです。夏休み明けに報告したら進路指導室に呼び出されて、ものすごく怒られました(笑)。

──短大時代、就職は旅行・ホテル業界を志望されていたそうですね。

人と話すのが好きなので、サービス業が向いていると思ったことと、旅行が好きだからという安易な考えで、旅行業界を志望していました。短大入学後はすぐに「国内旅行業務取扱管理者」という国家資格を取り、インターンでは都内有名ホテルで接客も経験しました。

就活をしていく中で、旅行会社のサービスは、一時的な思い出のために非日常を提供するのだと気づきました。それも素敵なサービスだと思うのですが、お客様の人生にもっと深く、長く寄り添い続けたいと感じたんです。根が現実主義なところもあり、華やかなサービスよりも、生活に近い場面でホスピタリティを発揮する方が、私には合っているし、お客様にも喜んでもらえると思いました。そうした想いから、志望業界を金融機関へとシフトチェンジしていきました。

リーマンショックと子育ての壁。「今の自分にできること」をきっかけにキャリア転機へ

──みずほ銀行では、どのようなお仕事をされていましたか?

法人融資の部署で、融資の稟議書作成や決算書に基づく財務分析、企業の格付け、担保となる不動産の評価など、一般職の事務をしていました。融資の部署には一般職の先輩は一人もおらず、総合職の男性から「これやっとけ」と、適当に教わりながら(笑)。そもそも融資って何だろうと思いながら、財務分析をしましたね。男性ばかりの環境でしたが、幼少期に男の子に囲まれて育った経験があったので、あまり苦ではありませんでした。

──法人融資のご担当だったとのことですが、印象に残っているエピソードはありますか。

入社した2008年の9月に、リーマンショックが起きました。いろいろな会社の業績が悪化して、緊急融資への対応に追われたり、貸出金利をシステム上で一斉に変更しなければならなかったり……。「この日までに稟議書を100件近く書け」というような緊急案件がすごく多くなり、そのころは始発で行って終電で帰るような毎日でしたね。

まだ入社1年目で右も左も分からないまま、それでもやらなきゃいけないという状況が続きました。あの辛さを経験したからこそ、今では過酷な状況でも耐えることができています。

──子育てを経験されたことが、キャリアの転機になったそうですね。具体的にはどんな出来事だったのですか?

みずほ銀行では4年半働き、出産を機に退職しました。先ほどもお話ししたように、わたしは「0か100か」でしか動けないタイプなので、子育てと仕事を上手く両立できる気がしなかったんです。銀行の仕事はすごく好きでしたが、子育ては何よりも大事だと思ったので、退職時は周りに止められましたが、育児に専念することを選びました。

キャリア復帰は、みずほ銀行の正社員再雇用制度を利用して早期に復帰する予定でした。ただ、次男は生まれつき筋力が弱く、障害と病気を持っていたんです。幼少期は入院生活や療育、理学療法のために毎週のように病院へ通っていて、そのときにみずほ銀行への正社員復帰を諦めることになりました。

キャリア復帰が叶わないショックがあり、その理由を次男のせいにしてしまっていることに、ずっと申し訳なさを抱えていました。5年ほど専業主婦をしている中で、現実をしっかり受け入れて「今の自分にできることは何だろう」と考えたんです。
そして、次男が幼稚園に入園できたタイミングで在宅経理の仕事を始めました。在宅経理は時間の融通が利く業務なので、子どもを幼稚園に預けている間や、夜寝静まった後の時間に働くことができました。その後は、次男が小学校に入ってからはさらに時間ができ、家の外でも働けるようになりました。

──育児が落ち着いたあとは、どのような仕事をしましたか?

銀行時代に担保評価をしていた経験から不動産業界に興味があり、近所の不動産会社に応募しました。そうしたら「鈴木さんはバイタリティがありそう」と評価され、なぜか本社で立ち上げたばかりの海外事業部へ配属されることに(笑)。主に海外輸出部門で貿易業務を行っていました。

タイミングを見て退職したのち、改めて希望していた不動産会社へ入社しました。そこでは社長のすぐ側で働いていて、経営まわりの実務を間近で見てきました。

商社、不動産の現場にいた経験もあったからこそ、今こうして行政書士として独立できているのだと思います。

社長のひと言で芽生えた独立心。行政書士を選んだ理由とは

──独立をしたきっかけを教えてください。

私は「お客様を大切にしたい」という強いこだわりがあったので、当時働いていた不動産会社で、社長に直接自分の意見をぶつけたことがあったんです。そうしたら社長から、「自分で経営してみればいい」と言われ、そこではじめて独立を意識するようになりました。

ただ、いざ独立しようと考えたときに「信頼を得られないのではないか」と気づいたんです。そのときに初めて短大卒という学歴が気になり、まずは信頼を得るために国家資格を取ろうと決めました。

──数ある士業の中で、行政書士を選んだ理由はなぜですか?また、行政書士の魅力を教えてください

経営者を直接支援したいという想いと、みずほ銀行時代に培った財務の経験を活かすためです。会社設立や創業融資のサポートは、金融機関での経験が強みになると考えました。

また、行政書士を選んだ理由のひとつに、「できることの幅広さ」があります。領域が限定されず、許認可から個人向け業務までさまざまなアプローチができます。

今では、創業支援で一番早い段階から起業家に深く寄り添えるため、行政書士を選んで良かったと心から思っています。

──試験勉強から独立を決意した際、不安はありませんでしたか?

独立を決めてからは早く、2023年5月末に退職したあとは、6月から試験がある11月に向けて勉強に専念しました。行政書士の資格は仕事をしながら勉強する人が多いですが、私は「0か100」でしか動けず(笑)。5ヶ月間勉強に集中したことで、無事に合格できました。

当時は早く独立して、自分で経営したいという思いが強くありました。資格を取った後のビジョンも明確で、うまく行く自信が謎にあったので、「受からなかったらどうしよう」という不安は1ミリもありませんでしたね。

──これまでの人生で、壁にぶつかったときはどのように乗り越えてきましたか?

「考える前に動く」ですね。私はあまり失敗を恐れないタイプで、悩んでも解決しないので、大失敗してもいいから動くべきだと思っています。立ち止まっているからこそ壁に見えるだけで、動いてみれば簡単に越えられることも多くあります。

これは起業支援でも同様で、「手続きが難しそう」と立ち止まっているお客様はすごく多いです。いざ相談に来ていただいて「やることはこれとこれですよ」とお伝えすると、「それだけなんですね」と言われるので、考えるより先に、気軽に相談に来てほしいと思います。

やりたいことが見つかる、行政書士という仕事への思い

──行政書士の魅力は、どんなところにあると思いますか?

国家資格があって信頼していただけるので、独立しやすいこと。そして、できることの幅が広いので、何かしら興味・関心があることに関われるのが魅力です。

行政書士の王道業務である許認可は、1万種類以上あると言われています。ご自身のバックグラウンドを活かして特化されている人が多く、やりたいことが見つけやすい仕事だと思います。

──行政書士を目指して勉強している方へのメッセージをお願いします。

行政書士は年配の男性が多い業界ですが、特に若い人や女性におすすめで、挑戦する人がもっと増えてほしいです。私自身、子育てと両立しながらやりたい仕事を実現できていますし、ライフステージが変わってもキャリアを断念せずに続けられます。

ただ、「資格を取ったその先のこと」までしっかり考えておいてほしいということはお伝えしておきたいです。行政書士は、試験に合格したからといって仕事が来るわけではありません。どのビジネスも同じですが、「何をしたいのか」「どうやってお客様を獲得していくのか」という具体的なところまでイメージしておくことが重要です。その後の動き方まで見据えて努力を重ねれば、やりたいことを実現できます。

これまでの経験とスキルを活かし、起業家の夢に寄り添う「創業支援」 への取り組み

鈴木愛美さんは、銀行員から行政書士となるまで、多彩な経歴を歩んできました。その根底には、常に「人の人生に深く長く寄り添いたい」という情熱があります。さまざまな葛藤や努力を乗り越えてきた中でたどり着いたのが、起業家の夢に一番近くで伴走する今の姿でした。

インタビュー【後編】では、元銀行員の強みを活かした創業融資支援の裏側や、起業を目指す方への熱いメッセージを伺いました。ぜひあわせてご覧ください。

投稿者プロフィール

鈴木 愛美
鈴木 愛美
さいたま市の気軽に頼れる秘書系行政書士です。
新卒でメガバンクに入行。法人融資担当での経験を活かし、現在では行政書士として、金融機関連携の創業融資をメインとした創業支援を行っています!融資相談をはじめ、会社設立や各種許認可、契約書作成などサポートいたします。